起業を考えていて、業種の研究をしている人におすすめなのが過去の成功例を見ることです。偉人の言葉で「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という格言があります。企業に関する本を読むのもおすすめですが、闇雲に起業する前にまずは過去の起業成功例を確認し、そこから学びを得ることは起業で成功するためにも重要です。
最近では主婦が起業した成功例や50代で起業した成功例、地方や田舎で起業した成功例、ひいては大学生、高校生や中学生のような学生が起業した成功例も数多く存在します。
この記事ではケーススタディとして有益な起業の成功例を厳選紹介し、起業するのにおすすめの業種などを解説していきます。
起業におすすめの業種一覧
起業アイデアが浮かばない人もいらっしゃるかと思うので、まず初めに起業するのにおすすめの業種を一部紹介します。起業の仕方の記事でも紹介した通り、起業で大事なのは自分の得意分野や情熱を持っている領域・事柄で勝負をすることです。そのため、興味はないけど稼げそうだから、という理由だけの起業はおすすめではありませんのでご注意ください。
- ITエンジニア、テクノロジー系
- 建設、エンジニア
- 観光、自然資源
- 小売、レストラン
- 不動産、宿泊施設
- ヘルスケア
- 教育、教育支援テクノロジー
上記以外にもさまざまなニッチをターゲットにした起業の成功例はあります。
女性・主婦の起業成功例
起業というとMBAを勉強して上場企業を目指している男性のイメージがいまだに強いですが、女性の起業家も大勢います。なかには主婦が起業した成功例も数多くありますので「女性・主婦だから起業は難しいのでは」と考える必要はありません。以下では女性・主婦が起業した成功例の3つのケーススタディをご紹介します。
株式会社ディー・エヌ・エー (DeNA)を創業した南場智子さんの起業成功例
女性のスタートアップ起業家の成功例としては南場智子さんが最近では有名でしょう。南場さんは、ハーバードのビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得後、1996年に米コンサルティング企業のマッキンゼーで日本では女性として3人目となる役員に就任しました。そしてその3年後の1999年にインターネット企業のDeNAを創業。同社は2011年にプロ野球球団を買収し横浜DeNAベイスターズの親会社になったことから、女性初のプロ野球球団オーナーとなったことでも話題となりました。
南場さんは34歳の若さで世界的起業のマッキンゼーの役員となりましたが、当時始まったばかりのインターネットに未来を見出し、ネットオークションのビジネスを始めるためディー・エヌ・エーを36歳のときに立ち上げました。ネットオークション事業自体はヤフーオークションなど競合他社の存在から上手く行きませんでしたが、その後モバイルゲームに活路を見出し、その後はヘルスケアやメディアなど幅広い領域で事業を展開しています。起業した当時は女性の社長も珍しく、女性起業家の成功例なんてほとんど無い時代ですから南場さんはまさに先駆け的存在と言えます。
ヨガ講師・Wさんの起業成功例
起業は必ずしも大きな上場企業である必要はありません。個人事業主としてコツコツやることも立派な起業です。専業主婦でも起業で成功できる例はたくさんあります。
Wさんは元々都内でOLをやっていた後に結婚し、ふたりのお子さんに恵まれました。しかし専業主婦として子育て中は子供とばかり話していたため社会とのつながりが感じられず、孤独感が増えたそうです。
外で運動をしたいと思っても夫は仕事が忙しく自由になる時間がない。そんな悩みを覚えていたWさんは子供とできる屋内運動はないかと考え、ヨガを始めるようになります。初めは子供の就寝中にネットの動画を見て始めたヨガでしたがどんどんとのめり込み、家族の力を借りてインストラクターのライセンスをゲットしたそうです。
Wさんはご自身の経験から子育て中の母親や妊娠中の女性をターゲットにした子供とできるヨガ教室を開くことにしました。ヨガの講師業やヨガ教室はたくさんありますが、子育てママを対象にした家族でできるヨガ教室はニッチ(隙間)なため、周囲には競合他者がいなかったこともWさんのビジネスを成功させる要因となりました。
Wさんのヨガ教室は連日盛況で予約が取りづらいことで有名になっているそうです。Wさんのケーススタディは、専業主婦だった女性の方でも起業で成功できる事例として多くの方も参考にできるのではないでしょうか。
トレーダーのMさんの起業成功例
Mさんもまた女性・専業主婦として起業して成功した良い例です。Mさんは大学卒業後、友人と職業訓練校のビジネスを始めましたが事業は伸び悩んでいました。そのうえ一緒に創業した友人が1000万円の起業資金を持ち逃げしてしまう不幸にもあい、倒産せざるを得なくなってしまいました。さらに29歳の時に双子の赤ちゃんが誕生。二人の赤ちゃんの面倒を見なければならなくなったMさんは、専業主婦として家にいながら稼げる方法を模索し株のトレーダーになることを決意します。
その日から毎日毎晩子育てと家事をこなしながら株トレードの勉強に明け暮れ、1年後には収益を出せるようになりました。翌年、収益が月1000万円を超えるほどにトレードが上達。トレード講師業も始めて事業を拡大させました。その後、個人事業主から法人にステータスを変更して専業主婦として起業することにしました。そして今ではトータル年収5億以上を稼いでいるそうです。
子育て中の方は時間が限られていることが多いので、自宅でできる仕事を探すのも良い選択肢です。特に今はインターネットを通じてビジネスをすることができるので、Mさんのような方はまさに女性・専業主婦の起業家として最高の成功例と言えます。
シニア(40代、50代、60代)の起業成功例
SNSなどで起業の成功例を見ると主に20代、30代の働き盛りな世代の人たちがやるイメージですが、決してそんなことはありません。40代、50代、ひいては60代のシニア世代でも起業した成功例はたくさんあります。
「シニアの自分が真似できる起業の成功例なんてあるのか」と思う人もいるかもしれませんが、以下ではそんな40代や50代の方による起業成功例をご紹介します。
米粉パン屋を始めた60代・Tさんの起業成功例
60歳の男性・Tさんはそれまで長年勤め上げた地方の信用金庫を定年退職。継続雇用も選べた中、退職し長年の夢だったパン屋を開くことにします。日本の米の消費が落ちていることに危機感を覚えたうえに、孫がグルーテンアレルギーで普通の小麦のパンが食べれないことを知ったTさんは、米粉を使ったグルーテンフリーのパンを作ることにしました。
ただ銀行マン時代とは全く異なる業種、スキルのため、まずはパン作り講座を受講するところから始めたそうです。しかし銀行マン時代の経験を活かし、自分が携わった起業の成功例から学んだことを元に綿密なビジネスプランを作りました。自分がシニアとして起業するには過剰な設備投資は行わず小さな店舗から始めることにし、マンションが多いエリアに店舗を置くことで家族連れの客をターゲットにしました。こうすることで不要な在庫を抱えることなくしっかりパンを売り切ることができ、売り切れると人気のある店というイメージがつきやすいからです。
当初は赤字が続きましたが、銀行マン時代の経験から起業の成功例を見ると4年後に収益が上がる傾向にあることを知っていたTさんにとっては赤字も想定内だったそうです。SNSなどのマーケティング活動にも力を入れたことにより、徐々に固定客が着くようになります。今ではシニア起業の成功例としてメディアからも取り上げられる機会が増えたそうです。
Tさん曰く、ビジネスを始める際は本などで学ぶことも大切だが、本だけではなく実際に起業するのがおすすめだとしています。起業することで本では学べないことがすぐに学べるからです。
睡眠改善インストラクターの組織を立ち上げた40代・Aさんの起業成功例
50代の女性・Aさんもまた女性・主婦の起業成功例だけではなく、よいシニアの起業成功例でもあります。
Aさんは大学卒業後に結婚して専業主婦となり、起業やビジネスとは無縁の生活を送っていました。子供も大きくなり、「さあ自分の時間を楽しもう」と思った矢先に睡眠障害を患っていることが分かりました。そこで日々の生活のクオリティを高くするためには睡眠が非常に重要だと気づいたAさんは独学で睡眠学を学び、生活改善への効果を調べることにしました。さらに睡眠改善インストラクターの資格も獲得し、自ら睡眠に関する広報・啓蒙活動に取り組みます。その後、睡眠の知識と文化、そして自分のインストラクターとしての経験を活かし、睡眠改善インストラクターを繋げる組織を立ち上げることにしました。
Aさんは睡眠改善インストラクターの資格を取ったことが起業するきっかけになったと感じていて、「起業するためにおすすめの資格というものはないけれども、資格が起業するきっかけになるので資格の取得はおすすめだ」としています。
行政書士に転身した40代・Iさんの起業成功例
40代後半男性のIさんは大学卒業後電気機器メーカーに就職し、20年以上営業として活躍していました。しかし技術職の同僚の方達と比べ、文系のIさんは自分の将来について不安を覚えていたと言います。特別な技術やスキルのあるエンジニアとは違い、営業のIさんには特別なスキルがなく、会社が傾けばリストラされやすいと感じていたからです。
実際に中国や台湾、韓国の電気機器メーカーの台頭もあり、Iさんの会社でも希望者に早期退職の募集が始まりました。40代後半に差し掛かっていたIさんは、子供もある程度大きくなっていたため思い切って退職し、20代のときに取得していた行政書士の資格を活かして独立することに決めます。
しかし経験のないIさんは、ひとまず知人の行政書士の事務所で働かせてもらいながら実務経験を重ねることにしました。そして3年後に独立し、Iさんの故郷の田舎で行政書士として起業し、成功を収めます。
Iさんは40代の起業の成功例として見られることに恥ずかしさを覚えるとしながらも、田舎で起業したシニアの成功例として希望になれればとしています。Iさんによると行政書士などの資格は起業するうえでもおすすめだとのことです。というのは資格は一度持っておけば40代、50代になって起業したい時に役に立ち、業務の内容も時を経て大きい変化がないため時間とお金のある若いうちに取得しておけば効率が良いからだそうです。Iさんのケーススタディはシニア起業の成功例としてだけでなく、起業のために資格を所得しておくことがおすすめであることの実例としても良い例でしょう。
学生(大学生・高校生・中学生)の起業成功例
学生の企業の成功例はたくさんあり、特にアメリカではAppleのスティーブ・ジョブズ氏やマイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏などは学生起業家として有名です。日本でも起業の学科を設ける大学も増えていて、起業について学べる機会は以前よりもずっと増えています。学生起業家が増えている中、成功例をご紹介します。
大学生の起業成功例 株式会社リブセンス創業者・村上太一さん
最近の大学生の起業成功例として挙げられるのが株式会社リブセンスを創業した村上太一さんでしょう。村上さんは早稲田大学在学中に同社を設立し、成果報酬型のアルバイト求人サイト「ジョブセンス」を開始しました(現在は「マッハバイト」に改称)。リブセンスは現在口コミが確認できる転職サイト「転職会議」や「転職会議エージェント」の運営などを手がけており、転職者が働きやすい起業のマッチングに注力しています。
村上さんは創業後2011年に東証マザーズに史上最年少で上場し、2012年には東証一部にも最年少で上場したことで話題になりました。株式市場への上場は多くの起業家にとって目標にしているところでもありますので、村上さんは大学生の起業成功例として多くの人たちが目指しているところです。
高校生の起業成功例 フードロスを活用したブランド作りをする薄井華香さん
高校生1年生の薄井華香は単身上京し、フードロスを改善するための事業を展開しています。自ら果物とお菓子の店「華果(はなか)」を経営し、こだわりのフルーツを使用した商品が話題となっています。
高校生社長ということからメディアでも度々目にするようになりましたが、経営者としても優れた能力を持っています。果物を廃棄せず加工して商品にすることから原材料費を抑えることができ、食品を無駄にしないで済むため効率が良いとされています。高校生起業の成功例として多くの人から応援されています。
中学生の起業成功例 子供・親子起業支援事業を12歳で立ち上げた加藤路瑛さん
加藤路瑛さんは中学1年生の12歳のときに株式会社クリスタルロードを創業しました。12歳にして事業計画書などを自ら書いてしまうのは驚きですが、起業したい子どもや親子、起業以外で目標に向かって努力をする子どもたちを支援することを目的にしており、小中高生のための職業探求ウェブメディアの運営を手掛けています。
同社ではクラウドファンディングの支援を行い、成功率の低い有望な起業家を目指している小中学生の子どもたちを支援したい考えです。加藤さんは年齢ゆえに投資家から相手にされなかったり、起業したい情熱を持っていてもどうしたらいいか分からない10代の人たちをターゲットにした支援ビジネスに着目しました。自身がクリスタルロードを創業するために必要な資金の100万円はクラウドファンディングで募り、大人の固定観念で子供のチャンスを潰させない未来を作りたいとしています。現在は感覚過敏研究所も立ち上げ、感覚過敏のような症状を持って生きづらい人たちがもっと生活しやすい社会を作ろうとしています。
田舎・地方の起業成功例
コロナ禍によってリモートワークが一気に進み、地方に移住する人も増えました。「地方の移住先や田舎で起業したいけど成功例はないだろうか」と考えている方のために、地方や田舎でできるおすすめの業種と起業成功例を紹介します。
最近は地方の起業に対する、創業補助金なども存在するため、以下の業種を検討している人は意外に地方も良いのではないでしょうか?
田舎・地方で起業できるおすすめの業種と成功例
- 自然・観光ビジネス
- オフィス・宿泊施設
- 終活アドバイス・介護
- IT系の支援ビジネス
地方・田舎で起業するのにおすすめの業種1 自然・観光ビジネス
地方や田舎にある資源として魅力的なのが自然です。特に日本の自然は海外で高い人気があります。森林伐採や環境破壊が世界では問題になっており、それは日本でも例外ではありませんが、実は日本の森林面積は国土の3分の2以上で約60%と高い森林保有率を誇っています。イギリスは森林面積が13%でフランスが28%、アメリカも33%と引く森林面積のため、日本のように自然豊かな国土は稀です。最近ではメンタルヘルスのために森林浴が良いとされており、欧米では“Shinrin-yoku”という英単語が登場するほど日本の自然への注目度は上がっています。
この日本の自然に対する需要に着目して、地方の起業成功例としては森林浴ガイドや森林の中でヨガを行う体験コース、森林セラピーなどがあります。特に言語の障壁から森林浴ガイドを英語やフランス語、中国語で行うサービスを展開すれば海外の観光客をターゲットにすることもできます。
他には寺の禅体験や宿坊などのビジネスは海外の旅行者から非常に高い人気があり、真言宗の総本山である高野山などでは宿坊ビジネスが成功しています。このように地方や田舎の起業成功例を見ると、その地域にある強みを観光資源に変えていることが多々あります。
業種にもよりますが、総じて、田舎における企業は、都会で起業するよりも圧倒的に、起業費用がかからないので、ミニマルな費用で起業を目指している人は、もってこいでしょう。
地方・田舎で起業するのにおすすめの業種2 オフィス・宿泊施設
世界的なコロナウィルスのパンデミックにより、地方に移住してリモートワークをすることが可能になります。この点に着目して多くの地方自治体がノマドワーカーを対象に移住募集をしており、非常に高い人気が出ています。
オフィスや宿泊施設を使った田舎・地方の起業成功例としては徳島県のWEEK神山が挙げられるでしょう。徳島県神山町は多くのITベンチャーがサテライトオフィスを開いたことで話題になっています。「なぜ徳島の田舎が?」と思いますが、神山町は町内全域が光ファイバーを敷設され、古民家を回収したオフィススペースが高い人気を得たことが大きな理由です。
WEEK神山は古民家をリノベートした宿泊施設ですが、大型のサテライトオフィス施設を儲けたことでコワーキングが可能なインキュベーション施設をつくり、日本版のシリコンバレーになろうとしていることも大きな魅力です。
試しに田舎で仕事をしてみたら起業の準備をするために最適な環境が揃っているから移住する、という流れが加速することで移住者が増え、神山町は地方創生の聖地とも呼ばれるようになりました。このように地方の行政と連携して環境を整えることで、オフィス施設や宿泊施設を使ってビジネスを興すのも地方・田舎で行える起業の成功例と言えます。
地方・田舎で起業するのにおすすめの業種3 終活アドバイス・介護
地方は過疎化と高齢化が進んでいるため、老後や死後の財産整理を依頼できる行政書士や専門家が不足しています。そのため、行政書士や法律の専門家が田舎に移住するとそれだけで高い需要を得られることがあります。
また、介護の人でも不足している地域が多いため、介護士の方なども地方や田舎での起業が成功例となっているケースが多いのも特徴です。
地方・田舎で起業するのにおすすめの業種4 IT系の支援ビジネス
こちらも同様に、地方では人手が不足しているため、ITに弱い個人やお年寄りが多くいます。地方でも都市部に行けば問題はありませんが、過疎地域に行くとやはりお年寄りが多いため、ITは大きな問題となります。
前述のWEEK神山も同様ですが、田舎で起業した成功例として都内のIT企業で働いていたUさんが、田舎に移住しインターネット環境の改善やIT施設の充実を訴えて行政に働きかけたところ、その業務がUさん自身に委託されて地方で起業することになった、というケースがあるそうで、地方在住のITエンジニアも広く求められていることから、IT系の人材は地方や田舎で起業すると成功例になりやすそうです。
起業の成功例とおすすめ業種 まとめ
この記事では過去の起業の成功例とおすすめ業種を紹介し、起業するうえで参考となる情報をまとめました。起業は難しいことのように思いがちですが、女性や主婦の起業成功例、シニア(60代・50代・40代後半)の起業成功例、学生(大学生・高校生・中学生)の起業成功例など数多くのケーススタディがあります。また、地方や田舎での起業成功例もあり、地方ならではの起業のメリットを見つけることも十分可能です。起業のおすすめ本を読むのも大事ですが、実際の体験談を調べてみるのも有益ですので、ここで紹介した起業の成功例を参考に、自分で起業するのに役立ててください。