起業を考えている人にとって一番の心配が“失敗”でしょう。「もしも起業で失敗したらその後どうしよう」「起業で失敗した人の末路は…」などと心配している人は数多くいます。

この記事では起業で考えられる失敗やこれまであった起業の失敗例、その末路などから学びつつ、起業のリスクとメリットを徹底検証していきます。

目次

起業で失敗する確率は?

起業の失敗リスクイメージ

起業のメリットやリスクを検証していく前に、起業で失敗する確率について見ていきたいと思います。一般的に“起業のほとんどは失敗している”といった印象を抱いている人もいますが、起業で失敗する実際の確率はどれくらいなのでしょうか。

日本は起業の失敗確率が低い

中小企業庁が発表している白書によると、2022年時点のデータで国内企業の廃業率は全体でわずか3.3%だとされています。他の先進国と比べてもイギリスが約11%、フランスが9.5%、ドイツが7.5%の廃業率であることから、日本の企業が廃業する確率は世界的に低いことがわかります。

さらに以下の表にある通り、起業後の生存率をみるとアメリカは48%、イギリスは44.5%であるのに対し、日本は81.7%と突出して高いことがわかります。

日本 アメリカ イギリス ドイツ フランス
1年後 95.3% 78.0% 91.8% 76.9% 83.6%
2年後 91.5% 67.1% 75.1% 62.2% 65.9%
3年後 88.1% 59.5% 59.6% 52.3% 56.2%
4年後 84.8% 53.8% 49.8% 45.4% 48.8%
5年後 81.7% 48.9% 42.3% 40.2% 44.5%

起業後の企業生存率の国際比較(中小企業白書 2017)

これは2013年から2017年の間のデータのため、コロナ禍などがあった昨今ではデータが変化している可能性もありますが、海外と比べて日本で起業して失敗する確率は他国と比べて低いことが統計的に言えるでしょう。そのため、必ずしも日本で起業した人のほとんどが失敗しているとは言えないことがわかります。

起業のメリットとリスク

起業のメリットとデメリット

起業で失敗しない方法を考える前に、まずは起業のメリットとデメリット、リスクをそれぞれ検証していきましょう。

起業のメリット

  • まず起業することのメリットは以下の4点があげられるでしょう。
  • 自由に好きなことが仕事にできる
  • 可処分所得によって自由に使える手取り収入が増える
  • 資産を築ける可能性
  • 定年なく働き続けられる

起業のメリット1:自由に好きなことが仕事にできる

起業したいと考える人の大きな理由は自由度が高く、好きなことが仕事にできることでしょう。最近ではYouTuberが人気の職業No1になるほどですが、プロのYouTuberもれっきとした起業家で億越えの報酬を稼いでる人もいるくらいです。また起業すると四六時中事業について考えることになるため、情熱を傾けられるようなものでないと起業しても辛くなってしまいます。

起業のメリット2:可処分所得によって自由に使える手取り収入が増える

起業すると自分の会社を持つことになりますので、さまざまな出費を経費で落とすことができます。サラリーマン時代には手取りの給料で全てをやりくりしなければならなかったのが、経費が控除されると可処分所得が増えることにもなりますので、これを期待して起業する人も大勢います。ただ経費の使い方を間違えると事業の失敗にも繋がります。放漫経営で起業に失敗した例については以下で解説します。

起業のメリット3:資産を築ける可能性

資産というと多くの人は不動産などを思い浮かべますが、自分で起業した事業も『資産』です。会社で保有している土地や事務所、店舗、ハイテク用品、そのすべてが資産ですので事業を売却した際には大金が手に入れられるだけでなく、それを担保にさらに借り入れて投資をすることでさらに資産を増やすことも可能です。大きな投資はサラリーマンではできないため、資産形成における優位性も起業するメリットです。

起業のメリット4:定年なく働き続けられる

最近では定年の年齢を引き上げようとする動きがありますが、雇用されている限り定年は存在します。有名な大企業で働いていると一定の年齢に差し掛かれば減給されるようになることもしばしばです。雇用されている立場だとリストラされるリスクもありますし、定年退職などで職を失った際には老後を楽しく過ごすことができるだけの資産を形成できているかどうかもわかりません。自分の事業を持っておけば年齢関係なくいつまでも働き続けることができ、収入を得たり資産形成をしたりすることができます。

起業のデメリット・リスク

起業のデメリット

それでは起業する際のデメリットとして考えられるリスクはどうでしょうか。起業のリスクは以下のようなものが考えられます。

  • 事業が失敗する可能性
  • 収入は保証されていない
  • 創業にかかる費用を調達する必要性
  • 税金対策や社会保険手続きなどの作業が伴う可能性
  • 景気に左右されると不安定な生活になる可能性

起業のリスク1:事業が失敗する可能性

失敗は起業につきものです。必ずしも全ての仕事が成功するわけではありませんし、再現性のある黄金的な法則も存在しません。以下では起業で失敗する要因や失敗しないためのヒントを解説しますので最後までしっかり読んでください。

起業のリスク2:収入は保証されていない

起業家であるからには給料は雇用者などから保証されてもらえず自分で稼ぐ必要があります。個人事業主や法人にかかわらず、固定した収入がないと社会的に不利な立場になることもありえます。例えば家族と住むための住宅ローンを組もうとしている際、事業が軌道に乗っているとしても安定した収入がないという理由でローンが却下される可能性も十分あります。事業がうまくいけば起業の成功例としてメディアなどから取材されることもありますが、スタートアップ当初は信用をこれから築いていかなければならないため不利な立場に立たされることも覚悟が必要でしょう。

起業のリスク3:創業にかかる費用を調達する必要性

個人事業主として起業する場合、登記手続きは税務署に書類を申請するだけで済み、なおかつ無料でできますが、法人になると手続きも複雑化し会社設立費用も大きな額になります。

さらに会社を設立した後も自分の力で起業資金を調達する必要があり、金融機関から融資を受けたり、ベンチャーキャピタルなどから出資を受けたりなど資金繰りに尽力する場面が発生することが考えられます。資金繰りに失敗して資金ショートに陥ると倒産することにもなりますので注意が必要です。

起業のリスク4:税金対策や社会保険手続きなどの作業が伴う可能性

個人事業主の場合は所得税の納付になり、会社だと法人税を納付することになります。さらに従業員を雇用するとそこでもまた社会保険料や雇用保険、健康保険など様々な出費が発生します。起業の準備をしている段階では想定していなかったコストが出てくると、「こんなはずじゃなかった」というような想定外の状況も発生する可能性が出てきます。

起業のリスク5:景気に左右されると不安定な生活になる可能性

誰しもが景気に影響されるものですが、好・不況に関係なく決められた給料がもらえるサラリーマンとは異なり起業家は必ずしもそうではありません。パフォーマンスが良い年があっても翌年は予期せぬ事態で結果が全く異なります。食品業や薬品業、物流などは景気の波に影響を受けにくいディフェンシブセクターとされていますが、外食産業や製造業、不動産などは景気敏感セクターとされており、その時々の景気で収益が大きく異なります。

起業で失敗する理由・共通点

起業で成功を収める人がいる反面、失敗する人も数多くいます。成功する理由はたくさんありますが、失敗する理由はだいたい同じと言われています。起業で失敗する理由としては以下のものが挙げられます。

  • 資金不足
  • 組織崩壊
  • 労働者不足
  • 放漫経営

起業で失敗する理由1:資金不足

資金不足はよくありますが、事業計画通りに行かなくなると資金が不足して融資や出資も受けられず、借金の返済がままならない状態になると倒産することになります。大抵の場合、融資先の金融機関に決められた期限までに融資の返済ができなくなると倒産の手続きに自動的に入ってしまうことになります。

起業で失敗する理由2:組織崩壊

組織崩壊は事業が行かなっているうえに役員同士が争っているために会社としての方針が決まらず、泥沼となって倒産してしまうケースです。このような場合、社員が連鎖して退職する、情報共有がされない、命令系統が混乱し始めるなどの特徴があります。起業家としては強いリーダーシップを示して乗り切らなければなりませんが、これを克服できないと倒産のリスクが高まります。

起業で失敗する理由3:労働者不足

驚きかもしれませんが、労働者不足によって倒産する企業が最近増えています。2018年には人手不足による倒産が前年より30%近く上昇したデータもあり、マンパワーを確保できないために倒産している企業や産業があります。

人手不足で事業継続に必要な社員やアルバイトなどの従業員を確保できず、事業の運営が不機能に陥ることがあります。労働者が不足する要因は様々ですが、新規採用の段階で適材の人を十分に確保できていないことや産業の変革による需要の低下などがあります。例えば新卒採用でフレッシュな人たちを採用しても離職率が高いと業務が回りきりません。また、トラックの運転手などが不足していることにより仕事を受注できない末に倒産ということも起きています。

起業で失敗する理由4:放漫経営

起業したばかりで大きな資金が手に入ると気分が大きくなって放漫経営になってしまうことが実際にあります。大抵の場合、豪遊したり自分の出費を会社の経費として計上しようとした結果、経費にできず税金が多額になってしまい、黒字経営にも関わらず倒産してしまうというパターンが多いです。

起業で失敗したその後は?

起業のメリット

起業で失敗すると、その後は多額の借金を返済するために苦しい生活が待っている…と考えがちですが、よほど無理な借入をしない限りそのような事態は稀とされています。というのも、合同会社や株式会社を設立して倒産した場合、破産手続きをすることになり、この際にできる会社の資産を処分して負債の返済に当てます。ただそれでも借金が返せないと経営者自身で返さないといけないとなるのかといえばそうではありません。会社は経営者や代表者とは別として扱われるため、会社の借金=起業家・経営者の借金というわけではないのです。会社を“法人”と書くように、まさにその“人”の借金であって経営者の借金ということになりません。ただ、融資や出資を受けたり、借入をしたりした際に自分の名前も連帯保証人にしてしまうと返済の義務が生じるので注意が必要です。

そのため、起業で失敗した人はその後暗い人生を送っているというイメージがありますが、多くの場合はそうではなく、次の事業で成功しようと立ち上がる人が多いとされています。ただ、会社の倒産の仕方によっては社会的信用も下がる可能性はありますし、信用度が下がると次の起業の際に融資が降りにくくなる、クレジットカードがつくれない、などのリスクやデメリットがあります。

起業失敗、その後に就職

起業で失敗した人が再就職することもよくあります。「起業で失敗した人間が雇ってもらえるの?」と思うかもしれませんが、会社によってはこの経験を高く評価してくれることがよくあります。というのも、起業して経営陣の目線を経験した人は就職先でも経営陣目線で働くことができるため、モチベーションが他の社員よりも高いことがあります。また、就職先で自分に足りないスキルなどを磨いて再トライすることもできるため、起業で失敗したけどその後に再就職し、再度起業家になる、という人も少なからず存在します。

起業で失敗した人の末路

起業で失敗しないためにも、過去に失敗した人の末路から学ぶことも大事です。ここでは起業の失敗例の末路を見ていきます。

起業の失敗例1:与沢翼さんの末路

一時期“秒速で1億円を稼ぐ男”としてメディアに騒がれた与沢翼さんは、アパレルのネット通販会社とアフィリエイト会社を創業しました。ネオヒルズ族とももてはやされ、成功を収めているかに見えたのですが、2011年にはアパレルのネット通販会社が4000万円の負債を抱えて倒産し、与沢さんは自己破産してしまいます。さらにアフィリエイト事業の方でも放漫経営によって資金がショートし、破産申請することになりました。全てを失い、一時はアパートに引きこもっている時期もあったそうですが、与沢さんはその後個人投資家としてデイトレードを始めるようになり、大きく稼げる勝ち組トレーダーとなっています。

起業失敗からデイトレーダーは稀なケースですが、与沢さんはこの失敗から多くのことを学び、新しい人生の船出をきったことから、必ずしも起業失敗後の末路は悲惨なものとなっていません。ただ、前にも挙げたように放漫経営による資金不足が起業失敗の要因となっていますので、これから起業する方は与沢さんのしくじりから学ぶようにしましょう。

起業の失敗例2:杉本宏之さんの末路

杉本宏之さんは20歳から不動営業マンとして活躍し、デザイナーズワンルームマンションに特化した不動産販売会社を起業して当時としては史上最年少で株式上場を果たしました。当時は不動産価格が上昇する前提でレバレッジをかけ続けながら不動産をどんどんと購入していたそうですが、リーマンショックによって世界の金融市場が崩壊。杉本さんの企業も煽りを受け、会社が破綻してしまいました。杉本さんも400億円近くの負債を抱え自己破産してしまいましたが、これが彼の末路ではありません。

落ち込んだ後は再起をかけて再び起業。今は不動産から太陽光発電など幅広い事業を手がける企業に成長しました。杉本さんは自身の失敗経験についてメディアなどで積極的に発信していますので、彼の起業失敗例から多くの学びが得られるのではないでしょうか。

起業の失敗例3:Oさんの末路

Oさんは敏腕な手腕で人脈を広げ、有名企業の社長代行を勤めるまでに登り詰めましたが50代で退職し、退職金を元手に起業しました。少子高齢化からこれからは医療関係のサービスが伸びると見て、ITと医療を掛け合わせたベンチャー企業を創業しましたが海外勢に資金力で劣り、数年で事業をたたむことになってしまいました。その後も複数の事業に携わりましたがうまくいかず、退職金も消えてしまい起業失敗後の末路としては賃貸アパートで奥様と暮らしているとのことです。Oさんのような企業失敗例では理想的でない末路もありえますので、本記事にある起業のメリットとリスクをしっかりと見極めて自分に最適な起業戦略を作るようにしましょう。

起業で失敗する人の特徴

起業に失敗する人

起業で失敗する人の特徴として以下のような点が挙げられます。

  • 事業や資金計画が現実的でない
  • 起業が目的化してしまっている
  • 経営・金銭感覚が欠如している
  • マネジメントに不向き
  • 友人と勢いでビジネスを始める

起業で失敗する人の特徴1:事業や資金計画が現実的でない

起業の準備段階で事業計画書などはしっかりと作るのは基本ですが、これが原因で起業に失敗することにもなります。というのも、事業計画が現実性がなかったり、机上の空論だとどうしても無理が生じるからです。『自分の計画に間違いはない』と固執してしまうと状況がただ悪化してしまうため、事業計画も状況に合わせて柔軟に対応させていくことが大切です。

起業で失敗する人の特徴2:起業が目的化してしまっている

起業が目的化している人の場合、現状の仕事が嫌で自由になりたくて起業を考えているパターンが多いです。独立すれば嫌な人間関係からも解放され、収入も増える、と淡い期待を抱いて起業するのですが、起業のアイデアや創業後のビジョン、モチベーションが弱いため肝心のマネジメントにおいて問題が発生してきます。起業する際には自分がなぜ会社を始めたいのか、その事業のメリットとリスクは、創業後のビジョンはどうする、などしっかりと考えることが大事です。

起業で失敗する人の特徴3:経営・金銭感覚が欠如している

これは上記で紹介した起業で失敗する要因の放漫経営に繋がります。サラリーマン時代の出費は会社の経費ですが、自分が経営者になると出費はコストであり、減益となる要因にもなります。ただ大金が手に入るとつい気持ちが緩み、『経費にできるから』と散財した結果会社が傾くことも実際にあるので十分注意しましょう。

起業で失敗する人の特徴4:マネジメントに不向き

経営者は会社員とは異なる感覚が求められるため、サラリーマンの感覚では結果は出ません。自ら事業を回し、収益を伸ばすための戦略を主体的に考えなくてはならず、課題も誰かに言われるのではなく自分で見つけなければなりません。

『部下から慕われるからマネジメントできる』と思っていても必ずしも経営者に向いているわけではなく、時には強いリーダーシップを見せなければなりません。

起業で失敗する人の特徴5:友人と勢いでビジネスを始める

これもよくある起業のリスクですが、気の合う友人と自由に仕事を始めるつもりが、経営になると方針が食い違い、組織が崩壊してしまう火種になります。組織崩壊は上記でも紹介したように起業で失敗する大きな原因ですが、仲の良さと経営の相性は別物であることを知っておきましょう。友人や知人と起業する際は経営方針や報酬、組織図、ビジョンなど徹底的に擦り合わせて準備をするようにしましょう。

起業で失敗しないために!まとめ

この記事では起業のメリットやデメリット、リスクを分析していきながら起業で失敗する原因について検証してきました。起業で失敗する大きな理由は資金不足や組織崩壊、労働者不足、放漫経営などが挙げられます。

起業にリスクはつきものなので自分の計画やビジョンなどを慎重に見極めることが何よりも大切ですが、データを見ると日本の廃業率は先進国のなかでも低いことから、起業で失敗して悲惨な末路をたどったり、借金漬けの人生になることは稀と言われています。法人の負債は個人の負債とは異なりますので、必ずしも起業で失敗したら借金を負うというわけではありません。多くの起業家が失敗を糧にその後再起し、大きな成功を収めています。

起業で失敗しない最善の方法は経営者としてマネジメント力をつけることでしょう。SWOT分析などでビジネスの成長戦略を包括的に立てるだけでなく、コンテンツマーケティングを効果的に行うことで利益を伸ばすこともできるため、経営スキルなどもしっかりと磨けば、起業で失敗する確率は低くできるかもしれません。